芦屋みっけ 読み物No.05

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THREE LINES, FOUR STATIONS

どの駅で降りるか

芦屋には駅が四つ、路線が三本あります。北から阪急、JR、阪神。どこで降りるかによって、見える芦屋がまるで違います。

PHOTO — 阪急芦屋川駅のホーム(写真差し替え)

SCROLL

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三本の線路が、横に並んでいます

芦屋の地図を開くと、東西に三本の線が平行に走っているのが見えます。北から順に阪急神戸線、JR神戸線、阪神本線。市の南北はわずか数キロしかないので、三本はかなり近い間隔で並んでいます。

そして芦屋は、北の六甲山地から南の大阪湾へ向かってずっと傾いています。つまりこの三本は、標高の順に並んでいることになります。阪急がいちばん山側、阪神がいちばん海側、JRがその中間です。

北から阪急、JR、阪神。
山から海への順に並んでいます。

駅は四つあります。阪急芦屋川駅、JR芦屋駅、阪神芦屋駅、そして阪神打出駅。三本の路線に四つの駅、というのが芦屋の骨格です。

面白いのは、この三本が別々の時代に、別々の会社によって引かれたことです。開業年を並べると、阪神が一九〇五年、JRが一九一三年、阪急が一九二〇年。十五年のあいだに三本が通りました。しかも海側から順に、山へ向かって増えていった。

芦屋という町ができていく順番が、そのまま線路の順番になっています。

FIG.1山側から見た芦屋。三本の線路が横切ります(写真差し替え)

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いちばん古いのは、海側でした

三つのうち最初にできたのは阪神芦屋駅です。一九〇五年、明治三十八年四月十二日。阪神本線の開業と同時でした。

当時の芦屋は、まだ精道村という村です。そこに大阪と神戸を結ぶ電車が通り、駅ができた。郊外に住むという発想そのものが、この時期に生まれています。芦屋が別荘地から住宅地へ変わっていく起点が、この駅でした。

駅のまわりには商店街ができます。芦屋でいちばん古い本通り商店街は、この駅の開業によって発展し、大正十二年から十三年ごろに名前がつきました。三八商店街も昭和のはじめにこの一帯で始まっています。

いまも阪神芦屋駅は生活の駅です。一日の乗降人員はおよそ二万七千人。特急も直通特急も停まります。大阪の梅田まで直通で行けて、駅を出ればすぐ商店街があり、市役所も近い。

山側の駅と比べると、こちらは日常の匂いが濃い。買いものかごを提げた人が改札を出ていく駅です。芦屋というと山手の邸宅を思い浮かべる人が多いですが、町としての芦屋はここから始まりました。

FIG.2阪神芦屋駅。芦屋でいちばん古い駅です(写真差し替え)

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一日八十人の駅でした

次にできたのがJR芦屋駅です。一九一三年、大正二年八月一日の開業。当時は国有鉄道の東海道本線で、西ノ宮駅と住吉駅のあいだに新しく作られました。

この駅には、いい記録が残っています。開業を求めたのは当時の精道村で、村は工事費として一万円を寄付しています。自分たちで金を出して駅を呼んだのです。

そして開業当時、一日の乗降客数はおよそ八十人でした。

開業した年の乗降客は、
一日およそ八十人。

いまのJR芦屋駅の乗車人員は、一日およそ二万四千人です。降りる人を含めれば五万人近くになります。百十年で六百倍以上になった計算です。村が一万円を出して呼んだ駅は、いま市内で圧倒的に人が多い駅になりました。

途中には災害もありました。一九三八年七月五日の阪神大水害では、芦屋川の堤防が決壊して駅の構内が水に浸かっています。

一九八〇年には駅ビルのモンテメールが開業し、大丸が入りました。いまは駅の北側に直結でラポルテもあります。買いもの、食事、用事のほとんどがこの駅の周辺で済んでしまう。新快速も停まるので、大阪へも神戸へも速い。芦屋でいちばん便利な場所です。

COLUMN

「芦屋」という名前の復活

JR芦屋駅ができた一九一三年、この一帯の自治体名は精道村でした。駅名の「芦屋」は、当時その土地に字名として残っていた呼び名から採られたものです。

その後一九四〇年に市制が施行されたとき、市の名前として「芦屋」が選ばれました。駅名として先に残っていた古い地名が、あとから町の名前になったことになります。

PHOTO — 阪急芦屋川駅から見た芦屋川(写真差し替え)

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ホームの下を、川が流れています

三本目が阪急芦屋川駅です。一九二〇年、大正九年七月十六日。阪神急行電鉄の神戸線開通と同時に開業しました。

この駅は、立っている場所が変わっています。ホームが芦屋川をまたぐ橋の上にあるのです。改札を出て少し歩けば、すぐ足の下を川が流れている。

ホームの下を、
川が流れています。

これは芦屋川が天井川だからです。上流から運ばれた土砂が積もり続けて川底が周りの土地より高くなっているので、鉄道は川をまたぐか、くぐるしかない。阪急と阪神はまたぐことを選び、JRはくぐることを選びました。同じ川に対して、三本の鉄道が二通りの答えを出しています。

改札を出て北を向くと、目の前に六甲の山が立っています。そのまま川沿いを二十五分ほど歩けば住宅地が終わり、高座の滝に着く。この駅は、日本のロッククライミング発祥地とされる芦屋ロックガーデンへの登山口でもあります。休日の朝は登山の格好をした人が改札から出てきます。

南側には芦屋山手サンモール商店街があり、その先は桜並木です。駅そのものは小さく、一日の乗降人員は一万三千人ほど。三つのなかで最も少ない。それでも、この駅から見える景色は市内でいちばん贅沢だと思います。

FIG.3阪急芦屋川駅。ホームが川をまたいでいます(写真差し替え)

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数字で見ると、こうなります

三つの駅の規模には、はっきりした差があります。

JR芦屋駅の乗車人員は一日およそ二万四千人。乗り降り合わせるとおよそ五万人弱です。阪神芦屋駅の乗降人員はおよそ二万七千人。阪急芦屋川駅は一万三千五百人ほど。これに阪神打出駅を加えても、JR以外の三駅の合計がJR一駅とようやく並ぶくらいです。

もっとも、これは駅の優劣ではありません。JRは新快速が停まり、大阪にも神戸にも速く着きます。通勤で使うなら選ばれるのは当然です。

数字の推移を見ると、別のことも分かります。阪急芦屋川駅の乗降人員は、一九九〇年には二万六千人を超えていました。いまはその半分ほどです。一九九五年の震災で大きく落ち込み、そのまま戻っていません。三つの駅とも震災でいったん営業を止めています。

数字は町の履歴書のようなものです。増えた駅と、減った駅と、戻らなかった駅がある。

FIG.4–7各駅の改札、ホーム、駅前、案内板(写真差し替え)

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どの駅で降りるかで、街が変わります

ここからは、実際に降りてみた話です。

阪急芦屋川で降りると、まず坂です。改札を出た時点で標高が高く、北へ行けばさらに上がります。景色に山と川が入り、住宅の敷地が広くなる。歩く人は少なく、静かです。観光で芦屋に来るなら、いちばん「芦屋らしい」と感じるのはこの駅かもしれません。

JR芦屋で降りると、いきなり商業施設です。駅ビルと直結の施設に人が流れ込み、バスが並び、タクシーが待っている。芦屋というより、ふつうの郊外の中核駅の顔をしています。用事を済ませるには最も速い。

阪神芦屋で降りると、生活が見えます。商店街があり、細い道があり、自転車が多い。飾りが少なく、人の暮らしがそのまま出ている駅です。

同じ市内で、駅を三つ変えるだけでここまで印象が変わる町はあまりありません。理由は単純で、山から海までの高低差が大きいのに、その距離が短いからです。数キロのあいだに、山手の住宅地と、駅前の商業地と、海側の生活圏が詰まっている。

だから、芦屋を一つのイメージで語ると必ず外れます。どれも芦屋です。

FIG.8駅前の風景。三駅とも表情が違います(写真差し替え)

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三つとも、歩いて回れます

三本の路線は近い間隔で並んでいるので、駅から駅へ歩けます。

阪急芦屋川駅からJR芦屋駅までは、芦屋川に沿って南へ下るだけです。ずっと下り坂なので楽に歩けます。JR芦屋駅から阪神芦屋駅まではさらに南へ。こちらも下りです。

逆向きに歩くと、当然ずっと上りになります。海から山へ帰ってくるのは、それなりに骨が折れます。芦屋に住んでいる人が自転車を電動にする理由が、歩いてみるとよく分かります。

三駅を通しで歩いても一時間はかかりません。そのあいだに、山手の住宅地、駅前の商業地、海側の商店街を順に通り抜けることになります。町の断面を歩いて縦断するようなものです。

芦屋という町の大きさを実感するには、これがいちばん早い方法だと思います。

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歩いてみる

おすすめは、阪急芦屋川駅から始めて南へ下る順路です。上から下へ歩くほうが体は楽ですし、山から海へという町の成り立ちの逆順で、新しい層から古い層へさかのぼることにもなります。

時間があるなら、先に北へ寄り道してください。阪急芦屋川駅から川沿いを二十五分ほど上がると高座の滝です。町から滝まで歩けるという事実を体験してから南へ下ると、この町の縦の幅が実感できます。

阪神打出駅にも足を伸ばす価値があります。駅の南には市内唯一のアーケード商店街があり、およそ百メートルしかありません。

それぞれの駅で、改札を出て最初に目に入るものを覚えておくと面白いです。山なのか、商業施設なのか、商店街なのか。それがその駅の性格です。

HANKYU
阪急芦屋川駅。1920年開業。ホームが川の上。ロックガーデンの登山口。
JR
JR芦屋駅。1913年開業。新快速停車。市内で最も利用者が多い駅。
HANSHIN
阪神芦屋駅。1905年開業。市内最古。商店街と市役所が近い。
UCHIDE
阪神打出駅。市内で四つ目の駅。南に約100mのアーケード商店街。

DATA

路線
阪急神戸線、JR神戸線、阪神本線の3本
阪急芦屋川、JR芦屋、阪神芦屋、阪神打出の4駅
阪神芦屋
1905年開業/乗降 約2万7千人
JR芦屋
1913年開業/乗車 約2万4千人
阪急芦屋川
1920年開業/乗降 約1万3千5百人
JR開業時
1日の乗降客 約80人
駅ビル
モンテメール(1980年開業)、ラポルテ

SOURCES

  • 各鉄道会社の公表資料および芦屋市統計書
  • 芦屋市の交通に関する計画資料
  • 各駅に関する公開情報