芦屋みっけ 読み物No.04

04

FIVE SHOPPING STREETS

歩いて買いに行く

阪急芦屋川駅の北口を出て、西へ。魚屋があって、八百屋があって、和菓子屋があります。芦屋の人は、案外ふつうに買いものをしています。

PHOTO — 芦屋山手サンモール商店街(写真差し替え)

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01

芦屋にも、八百屋があります

芦屋と聞いて、商店街を思い浮かべる人は少ないと思います。高級住宅街というイメージが強すぎて、その手前にあるはずの日常が想像から抜け落ちてしまう。けれど当然ながら、ここに住んでいる人も毎日ごはんを作ります。魚を買い、野菜を買い、夕方に自転車で坂を下ります。

芦屋には商店街が五つあります。山手サンモール、本通り、三八、駅西、そして打出。どれも駅のすぐそばにあって、どれも歩いて行ける距離にあります。

大きな商業施設もあります。JR芦屋駅には直結のラポルテがあり、大丸もある。日常の買いものがそこで完結してしまうのは自然なことです。それでも五つの商店街に人が歩いて来ている。

高級住宅街にも、
魚屋と八百屋があります。

市が来街者に行った調査によると、山手サンモール商店街に来る人の六割以上が徒歩でした。電車で来る人は二割ほど、自転車やバイクが一割弱。観光で来る場所ではなく、近所の人が毎日歩いて来る場所だという数字です。

この記事は、その五つを順番に見ていきます。歴史のある通りもあれば、名前の由来が拍子抜けするほど単純な通りもあります。共通しているのは、どれも生活のための場所だということです。

FIG.1夕方の商店街。買いものは自転車と徒歩が中心です(写真差し替え)

02

いちばん古いのは、本通りです

五つのうち、いちばん歴史が古いのが本通り商店街です。きっかけは鉄道でした。

一九〇五年、明治三十八年に阪神電鉄が開通し、芦屋に駅ができます。当時の芦屋は、まだ町というより村でした。駅ができたことで人の流れが生まれ、そこに店が並びはじめます。大正十二年から十三年ごろに、本通商店街という名前がつきました。

百年前の芦屋がどんな場所だったかを考えると、この順番は腑に落ちます。駅ができて、はじめて町になった。それまで大阪の富裕層の別荘地だった芦屋が、人の住む町へ変わっていくのも同じ時期です。商店街の歴史は、そのまま町ができていく歴史です。

市の記録には、昭和四十七年に撮られた本通り商店街の写真が残っています。半世紀前の同じ通りです。店の顔ぶれは変わっていますが、通りの幅も、曲がり方も、いまとそう変わりません。

いまの本通り商店街は、カフェやレストランが中心です。市の調査では、来街者から空き店舗を減らしてほしいという声が挙がっています。いちばん古い通りが、いちばん変化を求められている。

FIG.2本通り商店街。芦屋でいちばん古い通りです(写真差し替え)

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三と八の日に、夜店が出た

名前の由来が面白い商店街があります。三八商店街です。

昭和三年、一九二八年の八月ごろから店ができはじめました。その年と月にちなんで、三八という名前になったといいます。昭和の三年、八月。それだけの理由です。気の利いた由来を期待すると、拍子抜けします。

ところが、名前がついたあとに意味が生まれました。夏になると、三と八のつく日に特価販売の夜店が出るようになったのです。三日、八日、十三日、十八日、二十三日、二十八日。月に六回、通りに灯りがともる。

三と八のつく日には、
夜店が出ていました。

三八通りは長く芦屋の中心的な商店街として栄えました。市の記録には、昭和四十年に撮られた夜店の写真が残っています。アーケードのある通りに人があふれている、いまの静かな芦屋からは想像しにくい風景です。

ただし、この通りは一度なくなっています。一九四五年の空襲で、三八通りはほとんど全焼しました。いまある店並みは、そこから作り直されたものです。

芦屋はこの百年のあいだに、一九三八年の阪神大水害、一九四五年の空襲、一九九五年の阪神・淡路大震災と、三度この規模の出来事に遭っています。そのたびに町が作り直されてきた。商店街を歩くと、その一番新しい層の上を歩いていることになります。

COLUMN

谷崎が好きだった最中

山手サンモール商店街に、杵屋豊光という和菓子屋があります。ここの最中は「細雪物語」という名前で、谷崎潤一郎に愛されたと伝えられています。

芦屋に住んだ作家の名前が、いまも商店街の店先にある。記念館に行かなくても、こういう形で残っているものがあります。

04

山側の、静かな商店街

阪急芦屋川駅の北口を出て西へ歩くと、芦屋山手サンモール商店街があります。全長は三百メートルほど。長くはありません。

並んでいるのは、精肉店、鮮魚店、八百屋、果物店、総菜店、薬局、本屋、衣料品店、雑貨店、美容院、喫茶店、蕎麦屋、焼肉店、居酒屋、コンビニ、和菓子屋。生活に必要なものがひととおり揃っています。

面白いのは、その並びに「いかにも芦屋」な店が混ざっていることです。古くからの渋い店構えの隣に、新しいパン屋やカフェ、セレクトショップがある。山側という土地柄もあって、どちらか一方に寄りきらない。

ここは阪急芦屋川駅から徒歩三分ほどで、芦屋川の桜並木もすぐそばです。川を見てから商店街に入る、という順番で歩くと気持ちがいい。

ひとつ注意があります。この商店街は日曜と月曜が休みです。休日に訪れると、シャッターの下りた静かな通りを見て終わることになります。生活のための商店街なので、当然といえば当然です。

FIG.3山手サンモール商店街。阪急芦屋川駅から徒歩3分(写真差し替え)

05

駅西という商店街

五つのうち、いちばん知られていないのが駅西商店街かもしれません。名前のとおり駅の西側にあり、カフェやコンビニ、飲食店が中心です。

市の調査に名前が挙がっていて、来街者は年間を通してそれなりにいます。求められているのは、業種をもっと豊かにしてほしいということでした。

この節はまだ書けていません。現地を歩き、店の顔ぶれと通りの空気を確かめてから書き直します。五つのうち一つだけ扱いが薄いままにするのは、網羅を掲げる読み物として不誠実なので、ここは必ず埋めます。

FIG.4–7各商店街の店先。看板、軒先、値札、あかり(写真差し替え)

PHOTO — 打出商店街のアーケード(写真差し替え)

06

日本一短いアーケード

阪神打出駅を南に出ると、すぐ目の前が打出商店街です。国道43号にぶつかるまで、およそ百メートル。芦屋市で唯一のアーケード商店街で、日本一短いアーケード商店街とも言われています。

アーケードは、
百メートルしかありません。

入口には、打ち出の小槌をかたどったキャラクターの絵が描かれています。打出という地名は、一寸法師の打ち出の小槌ゆかりの地とされていて、近くには打出天神社もあります。芦屋のなかでも古い層に属する地区で、それらしい構えの家や路地が残っています。

このアーケードには、かつて大型の広告が掲げられていました。二〇一六年に芦屋市の屋外広告物条例が施行されたとき、商店会は自主的にそれを撤去しています。違反になるのが明らかなら外しておいた方がいい、という商店会長の判断でした。いま見上げると、そこには何もありません。

百メートルという長さも、実際に歩くとあっという間です。ただ、短いからこそ端から端まで見渡せて、通り全体が一つのまとまりに見えます。長いアーケードにはない良さがあります。

ちなみに打出は、村上春樹が中学生時代を過ごした場所でもあります。それらしい案内は特にありません。

FIG.8打出商店街の入口。うちでの小槌のキャラクターがいます(写真差し替え)

07

正直に言うと、楽ではありません

いい話ばかりを書くわけにはいきません。芦屋の商店街も、他の街と同じ課題を抱えています。

市が来街者に聞いた調査では、商店街ごとに求められていることが違っていました。山手サンモールと本通りは、空き店舗を減らしてほしい。駅西と三八は、業種を豊かにしてほしい。打出は、業種も品揃えももっと欲しい。どれも、いまの品揃えでは足りないという声です。

いっぽうで、JR芦屋駅前のラポルテは駅と直結していて、食品もファッションも生活用品も揃います。雨に濡れずに買いものが済む。商店街がそこと同じ土俵で戦うのは無理があります。

それでも歩いて来る人がいるのは、便利さとは別の理由があるからだと思います。顔を知っている店で買う、というだけのことですが、それは大きな施設では手に入りません。

そのうえ芦屋は、屋外広告物条例によって看板の大きさや色が厳しく制限されている街でもあります。商店街の店にとって、この条件はさらに厳しい。大きな看板も出せず、大型店とも競合する。それでも続いている店には、続いているだけの理由があるはずです。

この節は、実際に店の人に話を聞いて書き直します。いまは調査資料から読み取れることだけです。

08

歩いてみる

五つの商店街は、どれも駅のすぐそばにあります。全部まわっても一日かかりません。芦屋は端から端まで歩ける大きさです。

順番としては、阪急芦屋川駅から山手サンモールを見て、芦屋川を下って阪神芦屋の本通りと三八へ。そこから東へ移動して打出、という流れが自然です。芦屋は山から海に向かって傾いているので、北から南へ歩けばずっと下り坂です。

時間帯は夕方をすすめます。買いものの人が出る時間で、通りがいちばん動いています。昼間に行くと、どこも静かです。

曜日にも注意してください。山手サンモールは日曜と月曜が休みです。

それから、商店街を歩くなら買ってください。見るだけで通り過ぎると、ただの古い通りです。何か一つ買って、その店の人と一言話すと、まったく違う場所になります。それが商店街というものの、たぶん唯一の使い方です。

SUNMALL
芦屋山手サンモール。阪急芦屋川駅北から西へ約300m。日・月休み。
HONDORI
本通り商店街。芦屋でいちばん古い商店街。阪神芦屋駅の周辺。
SANPACHI
三八商店街。かつて三と八の日に夜店が出た、芦屋の中心商店街。
EKINISHI
駅西商店街。カフェやコンビニ、飲食店が中心です。
UCHIDE
打出商店街。阪神打出駅前。市内唯一のアーケード、約100m。

DATA

商店街
山手サンモール、本通り、三八、駅西、打出の5つ
最古
本通り商店街(阪神芦屋駅の設置は1905年)
三八の由来
昭和3年8月に組織がまとまったことから
唯一のアーケード
打出商店街(約100m)
山手サンモール
全長約300m/日・月休み
主な大型店
ラポルテ(JR芦屋駅直結)、大丸芦屋店
来街手段
山手サンモールは徒歩が6割超(2018年市調査)

SOURCES

  • 芦屋市「芦屋 思い出写真館」「三八通り商店街」文化財ページ
  • 芦屋市 来街者調査の概要(2018年)
  • 芦屋山手サンモール商店街の公開情報